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朝、おばあちゃんの入院している病院に行く。

仕事を休んだお父さんが先についていて、いつもどおりデリカシーなく大声でしゃべっていたけど、表情はいつもとちがって困った顔だった。

おばあちゃんは意識が混濁していると聞いていたので会うのがこわかったけど、私の顔をみたら「あら、おひさしぶり」といつもどおりだった。でも、顔はひどくむくんで、ベッドにべったり貼り付いたように横になっていて、もうずっと起きられないんじゃないかという気がした。

おばあちゃんの手をにぎって「心配したよ」と声をかけたら、たまらず涙がでてきた。おばあちゃんが申し訳なさそうに「いそがしいのにごめんね」と言った。

お父さんを追い出して手術着への着替えを手伝っていたら、医者がやってきておばあちゃんの頭に太いマジックでゴリゴリと印をつけはじめた。おばあちゃんはまだ着替えが終わってなくて半裸のままだ。あわてて毛布でおばあちゃんの体を隠したけれど、その光景から目をそらさずにはいられなかった。医者の前で、手術前の患者はあまりにも無力だ。

手術開始時間になっても準備がおわらず、執刀医が病室まで迎えにきた。手術予定時間を過ぎてますからね、と冷たくこわい言い方で言われたので、また嫌な気持ちになった。それでも失敗とかはマジで勘弁なので丁寧に謝って、よろしくお願いしますと深々あたまをさげた。

手術室前までついて行っておばあちゃんに声をかけようとしたけど、医者がすごい勢いで連れて行ってしまうので、すぐおわるからね、と声をかけるのが精一杯だった。おばあちゃんの顔は不安そうだった。

おばあちゃんを見送ったあと、お父さんが「オマエがくるまでもう手術なんかしないで死にたいとか言ってたけど、顔みたら笑顔もでてだいぶ元気になったよ」と言ったので、すこしだけ気分がよくなった。

ずっとついていたかったけど、夕方から打ち合わせがあったし、病院にいても何もできないのでお父さんにまかせて病院を出た。

夜、お父さんから無事手術が成功したと電話があった。手術後に兄が顔をみせたらすごく元気になったとのこと。安心したと同時に異常な疲れ。こんなときこそ、ごはんはちゃんとつくって食べることが大事と思って炊き込みごはんをつくった。