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夜の打ち合わせの前に病院に寄った。

おばあちゃんはまだ救急病棟にいて、周囲はバタバタとせわしない。病室をのぞくとおだやかな顔でぐっすり眠っていたので起こさずにおいた。打ち合わせの合間の1時間しかいられないので、できれば少し話をしたいと思ったけれど、手術前は一睡もできなかったと言っていたので、眠れていることがうれしかった。病院内の喫茶店でカフェオレを飲みながら、また日曜日にくるからね、と手紙を書いた。

手紙を置こうと病室にもどると、キョトンとした顔でおばあちゃんがベッドにすわっていた。起きあがって大丈夫なの? ときくと、起きるときは看護士さんを呼ぶようにと言われている、と言う。だめじゃん、寝てなよ、とベッドに寝かせたら、頭の傷が見えた。バックリと5センチくらいの傷があって、縫い目になっているところがひどくはれて盛りあがっている。こわい。


私は身勝手で欲ばりな人間なので、だれが死ぬところもみたくない。同世代の友人たちはもちろんのこと、おばあちゃんが死ぬのも両親が死ぬのも兄が死ぬのもいやだ。とにかくいやだ。だけどやっぱり現実的に考えて、おばあちゃんくらいは看取ってあげないとかわいそうだ、いくらなんでも、と思う。親より先に死ぬのは親不孝とか言うけれど、親不孝でもべつにいいので神様どうか親より先に死なせてください。せめて兄よりは先に死にたい。猫にも私よりも長生きしてもらいたいけど、寿命からいってあと10年ほどしか生きないらしい。いやだとしか言いようがない。

来年で30歳。これから、何人もの人が死ぬところを見なければいけないのなら、いますぐ、だれよりも先に死にたい。すみません。いやべつに自殺はしませんけどそのかわりだれもしなないでください。